「ことばのポトラックvol.1」 絶賛発売中!

2011年3月11日に起きた東日本大震災から16日後の3月27日、大竹昭子の呼びかけで、サラヴァ東京(東京/渋谷)にてスタートしたことばを持ち寄るこころみ。第一回目には13人の詩人と作家たちが参加して感動的な会になりました。( potluck = 「持ち寄る」)

2020年12月13日日曜日

加藤典洋さんと岡井隆さんを偲んで

                           大竹昭子

「ことばのポトラック」では、出演者の方々にこの日のために書き下ろした作品を朗読していただき、その声とことばを映像に残してきましたが、昨年5月16日には「vol.2 五つの声のかたち」に出演いただいた評論家の加藤典洋さんが、今年7月10日には「vol.5 声がつなぐ短歌」にご出演された歌人の岡井隆さんが逝去されました。
ここにおふたりの朗読映像を公開し、ご冥福をお祈りしたいと思います。



 加藤典洋さんには、堀江敏幸さんから出演のお願いをし、快諾をいただきましたが、その後、「こういうの、大変に苦手なので、どうしようかなとも思っています」という戸惑いのメールが届きました。東日本大震災をきっかけにはじまったイベントですから、内容は何でもいいと言うわけにはいかず、しかも書いたものをその場で読み上げるのですから当然です。困った、困った、とうなっておられる声が聞こえてくるような初々しいご様子に、思わず苦笑いたしました。
 加藤さんは当日、柳田国男が終戦の間際に書いた『先祖の話』を再読し、以前読んだときには気付かなかったことに驚嘆したという「ポトラック」にふさわしい文章(「細い糸のなか、2015」)を読んでくださいました。打ち上げにも残られて、後日、「とても楽しかった、呼んでくれてありがとう、得をした気持ちになった」というメールをくださり、感激したのを覚えています。

*当日のご報告と写真はこちら
http://katarikoko.blog40.fc2.com/blog-entry-791.html




 岡井隆さんには、「vol.5 声がつなぐ短歌」を企画した歌人の東直子さんからお声をかけていただきました。岡井さんは三十冊もの歌集を出されており、短歌界の大御所という印象を抱いていましたが、実際にお会いしてみると、まわりの者を少しも緊張させない軽快で朗らかなお人柄で、たちまち魅了されました。
 ステージでの振舞も実にユニークで、おしゃべりをしているように思わせておきながら、いきなり短歌を読み上げられるところなど、その融通無碍な雰囲気が実に颯爽としていてカッコよかったのが印象に残っています。
 映像を見直してみて、ドイツに旅する直前に出演いただいたことを思いだしました。自分がおなじ歳になったときにこのようにステージに立てるだろうかとふと考えてしまいます。岡井さんのエネルギーにあやかりたいと思います。

*イベント内容はこちら
http://kotobanopotoluck.blogspot.com/2011/08/vol5_19.html